想いの確認

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「大丈夫か?」 「え?」 「身体」 それでも、心配してくれることは、優しい。 「……はい」 その心配は、私を恥ずかしくさせ熱くさせたけど…… 「あの、共哉さん、まだ夕食できてないので、今から用意しますね」 私は照れ臭くて、彼から視線を逸らし言った。 「葉月」 けれど、すぐに視線を戻す。 「はい」 彼は私のすぐ前に来て、首に手を伸ばしてくる。 「……ん」 僅かに痛みを感じた。 それは彼の指が友梨香によって隠された場所を擦ったからだ。 「これ、どうしたんだ?」 「え?」 「何で隠した?」 彼の指には肌色が付いている。 さらに顔を近付けられた。 痕を隠したことを怒っているのだろうか。 「あ、これは、目立って恥ずかしくて……そうしたら友人が隠してくれたんです」 「化粧もその友達か?」 「えぇ」 私がするより断然上手い、友梨香のメイクは彼にもわかるらしい。 今日は前に買い物に付き合ってもらったときより、華やかに濃く仕上げられていた。 「朝から?」 「はい」 すると、彼は小さくため息を吐き、私を抱き締めた。 「と、共哉さん?」 「なぁ、今日は何があった?」 「え?」 「聞いたよ崎田から。お前何から逃げてたんだ?」 その声は苦しそうにも聞こえる。 その質問には、何て答えていいのかわからなかった。 「葉月言えよ」 どう、言えばいいのだろう。 「あの男か?」 「え?」 「あいつだよ」 あいつとは誰か。 しかしそれが児玉さんのことだとわかり、首を振った。 「じゃあ何だ?崎田からはお前が慌てて乗り込んできたと聞いた」 崎田さんはなんて心配性なのだろう。私は密かに驚く。 「何でもないんです」 「何でもないならどうして慌てていたんだ?」 彼は私の顔を上向かせる。 抱き締められてるからすごく近い距離に顔がある。 「そ、それは……」 「それは?」 彼の目が鋭い。 一体どうしてしまったのだろうと思いつつ、今日のことを話すことにした。 「やけに今日は周りの視線を感じている気がしたんです。いつもは感じないのに、それが気になって……」 一度、一呼吸した。 首の痕のことを自分から言うのはやはり恥ずかしい。 でも、彼の目が私を攻めている。
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