想いの確認

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その声は苦しそうで、彼の願いのようで、私を一気に熱くする。 「共哉さん」 「買ったらずっとしとけよ」 「は、はい」 私にとってそれは嫌なはずがなく即答すると、彼が優しい笑顔をくれた。 「共哉さん寝ないのですか?」 夜、私は仕事をしている彼を覗き込んだ。 「もう少し仕事してから寝るよ、お前は寝とけ。明日、早いからな」 彼は夕飯とお風呂以外、ずっと部屋に籠って仕事をしている。 明日早いのは共哉さんも同じなのだ。 「何かお手伝いできませんか?」 学生の私に手伝えることなんてないだろうが、尋ねずにはいられない。 「大丈夫だ、俺も、もうすぐしたら寝るから、お前寂しいのか?」 そう聞かれると、一人で寝るのが寂しいみたいで恥ずかしい。 昨日、あんなことをしたばかりだ。 顔が熱くなるのを感じて下唇を噛み締める。 すると椅子に座ってた彼が立ち上がり、大きな手で私の頭を撫でてきた。 「可愛い顔しやがって、食べられたいのか?」 「た、食べ?」 何をと、思ったと同時、彼に唇を奪われた。 熱くなった顔に触れる心地いい温度の冷たい唇。 それが離れたと思ったら、身体が浮いた。 「運んでやるよ」 「え、や……」 簡単にお姫様抱っこをされてしまい、ベッドに下ろされる。 胸が激しくドキドキしていた。 「今日は寝とけ」 彼に見つめられ、恥ずかしくなるのに、ベッドの上というのがまたそれを大きくする。 帰宅してすぐ宮前さんにバレないように、シーツを交換したことを思い出したりして、さらにドキドキした。 これ以上はもう無理だ。 「は、はい……お、おやすみなさい」 仕事をして大変だなんて、今は気さえ遣えなくなっている。私は思わず、頷いてしまった。 「おやすみ」 彼は私にまたキスを一つくれる。 触れられた唇がじんじんして、たまらない。 これ以上彼の側にいたら心がもたない。 急いで横になり、布団を深く被ると共哉さんは、すぐに仕事を再開させたようだった。 私はしばらくその後ろ姿を見つめていたが、昨日の疲れも大きく、寝てしまう。 小さく寝息をたてはじめる私を、彼が手を休め、近づく。 もちろん私は彼に気づくわけがない。 「葉月、好きだよ……」 深く眠る私の頭を優しく撫でる共哉さんが、気持ちを伝えてくれているとは思いもせず、私は幸せな夢をみていた。
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