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「お味は大丈夫ですか?」
「あぁ、まずくない」
「よかったです」
本当は美味しいと言ってやりたいいつもの俺を見慣れている葉月は、珈琲を旨いと飲んだ米倉をどう思っただろうか。
なぜか今思い出した。
あまり葉月を他の男にさらしたくない。
「今日米倉が持ってきた講師のことなんだが……」
「あっ、はい」
「俺も目を通した。悪くなかったぞ」
「そうですか、わざわざありがとうございます」
大学のサークルはほぼ出会いの場と化するため、言っておきたかった。
きっと可愛い容姿の上、素直な彼女を好きになる男はいるに違いない。
そう思うとやはり家で習わせたいと思う。
好きなことをしていいと言ったくせに矛盾だらけだ。
こんな胸の内を知られたなら、女々しくて嫌われそうだ。
ここ数日でかなり膨らんでしまった俺の想いは、どこまで膨らむのだろう。少し、怖い。
ここまでヤキモチを妬く自分に驚くうえ、呆れる。
目の前にいる葉月に牽かれて止まない。
胃袋も、俺の心も捕まれて困るほど……
だから翌日にある男からの電話に更にヤキモキすることになるなんてこの時はまだ知らなかった。
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