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それから俺たちは夕食を済ませた。
わりと穏やかな時間が過ごせたと思う。
しかし俺が風呂を終えたあと、リビングへ足を向けたときだ。
葉月が電話をする姿が目に入ってきた。
電話なんて珍しいことではない。
それでも葉月が「あっ」と言い、慌てたような声をあげたため、視線が重なった。
「葉月ちゃん?」
しかも携帯から男の声がしたため、驚く。
誤ってスピーカーオンの状態にしたよう。
「葉月ちゃん?」
若い男の、しかも馴れ馴れしい呼び方で彼女に呼び掛ける声がしている。
「呼ばれてるぞ、男に」
今までの穏やかな感情は一気に吹き飛ぶよう。
「葉月ちゃん?」
男の声が俺を苛立たせる。
「俺に遠慮せずに出ろよ」
友達かもしれない、
だが親しげな呼び方の電話に男からはそれ以上の感情を感じる。
もしかしたら、葉月も好きなのかもしれない。
「え、えっと……」
たじろぐ様子に優しくなんて全くできない。
「話してる相手は俺じゃないだろ」
好きにしろと言ったのは俺だ。
そのため、怒るのはおかしい。
だが、苛立ちを抑えきれず、俺は大きく音を立てて自分の部屋へ歩くと、大きな音を立てドアを思いきり閉めた。
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