囲いたい彼女

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米倉に急がせていたため、葉月のいる場所に早く着いた。 一人で立っている彼女が見え、周りに男がいない事にホッとする。 俺は車を降り、側に歩み寄った。 「共哉さん」 俺を上目遣いに見つめる彼女が頼りない。 「葉月、待たせたな、おいで」 「あっはい」 彼女の手を自然とひいてしまう。 俺と違う温かい手が彼女のものだと思わせ、苦しくなるのは好きだからだろうか。 だからドアを開け、車に乗せる葉月の手を離したとき、寂しいと感じたのは秘密だ。 俺も車に乗り込むと、やけにニヤついた米倉と視線がぶつかる。 嫌な感じだが、仕方がない。 米倉が葉月に視線を変えた。 「こ、こんにちは」 「こんにちは奥様。お待たせしてすみません」 「い、いえ」 葉月は慣れてないため、米倉に対して俺と話すより固い。 「米倉、もういいから出せよ」 「はいはい」 だが、彼女を見られるのも面白くないため、急かしてしまう。 葉月は「あの、急用が入ったのですか?」と言った。 危機感が足りなすぎるだろう、と彼女を睨んでみる。 「お前いくら友人の兄とはいえ、男に送らせるってのはどうなんだ。崎田をなぜ呼ばなかった?」 「え、えっと……」 崎田は俺に彼女と友人の兄が二人で帰るとは言っていない。 そして二人ではないとも言ってない。 だから責めてしまう。 「お前は非力だから二人きりになればどうにでもされるんだぞ」 男からしたら葉月のようなか細い女、力づくで捕らえるのは簡単なこと。 もしそうなったなら、怖い。
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