囲いたい彼女

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しかし葉月は理解をしてないような顔俺を向く。 「ったく、近くにいたからよかったものの、崎田から報告受けたときは驚いた」 わざと大きくため息を吐いてみせる。 そのうえ「聞いているのか?」と強くあたった。 「き、聞いてます」 これではやつ当たりだ。 俺が面白くないから。 「共哉、そんなに突き詰められたらびっくりするんじゃない?」 赤で停車した際、米倉が後方を向いた。 おかげで少し冷静になれた。 「悪い」 「い、いえ……」 それには気まずくなり、彼女から視線を逸らし小さく息を吐いた。 これは嫉妬だ。 彼女が男と二人きりでいた、ということが俺を嫉妬させる。 しかし、俺の気持ちは全く知らないでいる彼女。 こんなに恋愛事に疎いと、心配になる。 鈍い彼女だから囲っていたくなる。 会社に着くと葉月はわかりやすく動揺し始めた。 「まだ仕事が残ってるんだ。葉月も来い」 「え?」 帰りたい、そんな表情。 だが帰す気は更々ない。 「あ、の……」 「なんだ?」 「私、お邪魔では……」 邪魔ではないと否定しようとする前に、米倉が「奥様、大丈夫ですよ。会議もないですし」と言った。 それは優しい声。 俺もそんな声が出せるといいのに。 「で、でも……」 「お前は俺の部屋にいればいい。行くぞ」 戸惑う彼女を無視して、会社の中へと連れていく。 今日は彼女を閉じ込めておきたかった。
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