279人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
告白は素直に嬉しい。
思わず“俺もだ”と返したくなるくらい。
だが同じ気持ちを伝えることができない。
初めに放った言葉に苦しめられる。
好きにならないと言ったでは、ないかと。
「好きなんです」
喜びと戸惑いが胸に同時に広がる俺に彼女が、また一つ気持ちを重ねた。
その声は震えていたけれども、嘘には聞こえなかった。
「葉月、俺が憎くないのか?お前を利用したんだぞ」
初めに酷いことを言ったのに、彼女は本当に俺を好きでいてくれるのだろうか。
利用したなんて思ってもないが、傷付けて冷たくした。
「憎いなんてとんでもないです。初めはどうであれ、今はこんなに優しくしていただいています」
酷くした俺までも受け入れてくれたと思っていいのだろうか。
「葉月……」
彼女の気持ちを知りたくて、俯く彼女の顔を僅かに上向かせた。
「お前の意思もなしに結婚した俺を許せるか?」
ずっと存る罪悪感。
好きだと伝える前に、確認したい。
「許すだなんて、元々怒ってませんし、共哉さんには私の実家を助けていただいたのですよ。我が家を救ってくださった共哉さんに、頭を下げなければならないのは私の方です」
それに胸が締め付けられる。
俺の欲で結婚させたことを救ったと思うなんて……
何も言えなくなった。
最初のコメントを投稿しよう!