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「冷たくして、申し訳ありませんでした」
「言うほど冷たくないよ」
「でも……」
優しくて、真面目。
「お前は素直な上に真面目過ぎだよ」
それでいて素直すぎる。
濡れたタオルを離し、乾いたタオルで仕上げる気遣いにもすごいと思える。
「え?」
俺が葉月くらいの頃なんて、ひどいもの。
しばらく見つめ合うと、彼女はハッとしたような表情で手を離した。
意識してるのかもしれない。
そうとも取れる仕草に、さきほど押し殺した想像を思い起こしそうになる。
「終わったか?」
「あっ、はい。すみません」
終わらせるよう、彼女を誘導させる。
「葉月こそ、風呂入ってこいよ」
「あっ、はい」
それに葉月は逃げるように退室し、浴室へいくのだが、俺はしばらく動けないでいた。
想いが通じ合えたから、嫌でも想像してしまう。
色々。
「っくしゅ……」
俺は自分のくしゃみをきっかけに、ようやく立ち上がった。
そして、風呂上がりの葉月を捕まえようとリビングへ向かうのだった。
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