伝わる甘い熱

11/21
前へ
/21ページ
次へ
片付けられていないテーブルの辺りを少し眺めていると、泣き出して食事ができなかった葉月を思い出す。 何か食べた方がいい。 何かと思い、ケーキを結びつけた。 喜んでくれるかもしれない。 そう思い立ちすぐ、俺は一人で家を出て、コンビニに向かった。 だいたいのものは塔子さんが揃えてくれるから、夜中にコンビニに行くことなんてそうない。 まさか誰かのためにわざわざ身体を動かすなんて、ましてや葉月に。 前の俺では考えられない。 それだけ葉月は特別なのだと感じて、それだけ甘やかせたいのだと思うのだ。 コンビニに着くと、まず目に付いたのは苺のショートケーキ。 俺はそれを手に取り、他に目に付く物を何個か手にした。 そして、もしかすると使うかもしれないと思い、密かに熱い夜を想像し購入してした。 帰り道、本当に念のためだと自分に言い聞かせ、想いの通じた妻の事を思う。 やけに買い物袋を持つ手が熱い気がした。 家に戻るとまだ葉月は風呂のようだった。 俺は急いでこっそりと買った避妊具を、自室のデスクの引き出しに隠す。 僅かに胸をドキつかせながら、リビングへ戻る。 何事もなかった顔をして。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

254人が本棚に入れています
本棚に追加