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片付けられていないテーブルの辺りを少し眺めていると、泣き出して食事ができなかった葉月を思い出す。
何か食べた方がいい。
何かと思い、ケーキを結びつけた。
喜んでくれるかもしれない。
そう思い立ちすぐ、俺は一人で家を出て、コンビニに向かった。
だいたいのものは塔子さんが揃えてくれるから、夜中にコンビニに行くことなんてそうない。
まさか誰かのためにわざわざ身体を動かすなんて、ましてや葉月に。
前の俺では考えられない。
それだけ葉月は特別なのだと感じて、それだけ甘やかせたいのだと思うのだ。
コンビニに着くと、まず目に付いたのは苺のショートケーキ。
俺はそれを手に取り、他に目に付く物を何個か手にした。
そして、もしかすると使うかもしれないと思い、密かに熱い夜を想像し購入してした。
帰り道、本当に念のためだと自分に言い聞かせ、想いの通じた妻の事を思う。
やけに買い物袋を持つ手が熱い気がした。
家に戻るとまだ葉月は風呂のようだった。
俺は急いでこっそりと買った避妊具を、自室のデスクの引き出しに隠す。
僅かに胸をドキつかせながら、リビングへ戻る。
何事もなかった顔をして。
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