伝わる甘い熱

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食事をする彼女を、俺は頬杖つきながら眺める。 俺をチラチラと意識する葉月の視線が可愛い。 「あの、おかわりはいかがですか?」 「いや、いいよ。ごちそうさま」 「あっ、はい。あ、温かいお茶いれましょうか?」 「いや、まだいいよ。ゆっくり食えよ葉月」 そのうえ、気遣ってくれる彼女の気持ちに嬉しさを感じる。 こういうところは若いのにと、感心してしまうところ。 「共哉さん、あの……珈琲いれましょうか?」 「いいよ、ほんと。食えよ」 俺は食べ終え、彼女一人食べるのを見ているのが落ち着かないのもあるのだろう。 「もう少し、作ればよかったですね」 「じゅうぶんだよ。あの時間でこれだけ作れば」 彼女は本当に優しい。 「ありがとうございます」 それに、とても素直。 「お前は、素直だな」 「え?」 「あの家でよく、お前は真っ直ぐ育ったな」 葉月の父親に育てられたにも関わらず、よく真っ直ぐ素直に成長したものだと感心する。 「厳しかったろ、父親」 「えぇ、それなりに……」 彼女みたいなタイプは珍しいだろう。 「お前の姉は我慢できず、飛び出したんだろう、お前はえらいよ」 姉の弥生が出ていってしまったことは有名な話。 「共哉さん。姉のことをご存知なのですか?」 葉月はやはり昔、俺に会ったことを覚えていないようだ。 「あぁ、昔会ったことがあるよ」 「そうですか」 「お前と違って活発だったな、お前は前から大人しかったが」 姉の後ろに隠れて様子を窺う彼女を思い出して苦笑した。 「私とお会いしたことが?」 「ん、あぁ、随分昔な。子供の頃だ」 「いつですか?」 「お前の父親が昔開いたパーティでな」 すると彼女は急に暗い表情になってしまった。
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