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涙は少しずつ落ち着いていくのに反して、身体はひくついて苦しそうな葉月。
だから優しく落ち着くよう背を擦る。
これまで人前で泣くことなんてなかったのではないだろうか。
俺が彼女の支えになってあげたいと思う。
そして彼女の望みを叶えてあげたいと思う。
できる限りの事はしてやりたい。
「姉に会いたいか?葉月」
突然かとも考えたが、彼女は姉に会いたいに違いない。
「え……?」
葉月は胸から少しだけ顔を離し、俺を見上げた。
涙でぐっしょりとした目元が痛々しい。
「さがせないことはないはずだ」
葉月の瞳が大きくなる。
「さがすか?」
彼女の父親がどこまでさがしたかわからないが、きっとさがし出せるはずだ。
葉月がさがして欲しいと言ったならすぐにでも動きたい。
「あ、会いたい、ですけど……」
「やめとくか?」
「は、い…」
しかし答えは意外なもの。
「わかった」
喜ばせるため秘密に調べる手もあるが、嫌な思いをするのは彼女。
俺が姉の代わりに、いや、姉よりも彼女を甘やかして、包み込み葉月らしさを取り戻せるよう力になれればと強く感じた。
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