伝わる甘い熱

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彼女は再び俺の胸に顔を埋めた。 それから強く抱き締める。 「ありがとうございます」 「あぁ」 少しは流せただろうか。彼女の寂しさや苦しさを少しでも散らせたのなら俺は嬉しい。 だから彼女がいいと言うまで抱き締めていようと思った。 「あ、あの……」 「ん?大丈夫か?」 「はい」 しばらくした後、彼女がゆっくりと俺から離れる。 胸の温度が急激に冷え、寂しいとも感じた。 「共哉さん、これ……」 泣き止んだ彼女が俺の胸に手を伸ばす。その手をゆっくりと退かした。 濡れた服を気にしているのだ。 「着替えればいいよ、お前は風呂に入ってくるか?」 「はい。あの……」 「ん?」 「ここ、冷たくなりましたよね。共哉さんのここ温かいタオルで拭いていいですか?」 彼女の意思は純粋なもの。 何も思惑がないとわかっていても胸が高鳴ってしまう。 「待ってて下さい。今タオル温めてきます」 何も言えない俺の側から彼女は離れる。 きっとタオルを取ってきて、温めようとするに違いない。 想像すると今の彼女に罪悪感を感じてしまい、葉月が来る前に着替えておこうと自分の部屋に入るのだ。 彼女が来るとは思わずに。
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