伝わる甘い熱

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「よかった、まだ……」 しかし葉月はすぐに俺を追ってきた。 焦って部屋のドアを開けていたために、すんなり見つかってしまう。 「葉月、大丈夫だぞ」 彼女の手にはタオルが握られており、拭く気満々というところだ。 「ううん、拭かせて下さい。気持ち悪いはずです」 彼女は真面目だ。 だから俺も疚しさを押し殺して、彼女を部屋に入れた。 「わかった、頼もうか」 「はい」 「ここじゃなんだからおいで」 部屋に入れるのは、初めてのこと。 興味深々という感じに部屋を見回している。 俺はベッドに腰掛た。 「脱げばいいのか?」 その方が拭きやすいと思い尋ねたが、彼女の反応が予想していたものと違った。 「え!」 目を瞬かせ、緊張を見せたから。 「拭いてくれるんだろ?」 そのため、少し意地悪になってしまう。 「は、はい……。お願いします」 急に固くなる彼女がが可愛くて俺はわざと「ほら、脱いだぞ」と言った。 男の裸なんてそう見たこともないだろうから、案の定固まる。 「葉月」 ヤバイくらい可愛い。 「あっはい。失礼します」 それでも真面目な顔で正面に座ってくるから、色々たまらない。 葉月は俺の心情も知るはずもなく、白い腕を伸ばして胸にタオルを当てた。 「温かい」 思わず息が漏れるほど温かく気持ちがよかった。
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