少しでも側に

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「葉月、適当に頼んでいいか?」 「……お願いします」 とても葉月はメニューなんて選べそうにない。 彼女が元気になればいい、と一番彩りの明るく写っていたコースメニューを頼んだ。 「ここ、来たことあるか?」 「え、ないです。初めてです」 「そうか」 落ち込む彼女を楽しませるような話題を提供出来る技もない俺は、「それならよかった」と言うくらい。 「共哉さんはよくここに来られるんですか?」 「まぁ、たまにな」 そんな、会話で場を繋ぐ。 ずっと沈黙でいるのは彼女の哀しさを増やしてしまうと思ったけれど、下手くそだ。 少しずつ料理が運ばれる事が、今日はありがたかった。 「今日はフルート、出来そうか?」 今日は葉月のフルートを習う日だ。 「えぇ」 「今日は来てもらわなくてもいいんだぞ、俺も早く帰られるはずだ」 月謝を気にして何がなんでも受けそうな気がして、そう言うと「大丈夫です。習うの楽しみにしてましたから」と答える。 「そうか」 それが本心なのか気を遣ってるのかわからない。 ただ俺も早く帰ることにしようと決める。 「塔子さんがいるうちに帰るよ。フルート練習しておけよ」 だからそう伝えると、彼女から俺を頼る台詞がきて、一気に舞い上がってしまいそうになった。 「共哉さんがいてくれてよかったです。今日も夜一緒にいていいですか?」 「昨日から俺の部屋に来いと言ってる」 だからわざと落ち着かせるため、命令口調になってしまったのは仕方がない。 「ありがとうございます」 それに少しだけ表情を緩ませる葉月に、胸が大きく揺れた。
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