少しでも側に

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食事を終え、会社に戻ると、早速仕事を再開させた俺に対し、葉月はもう何度と同じ雑誌を捲っている。 きっとその行動に気付いてないくらい、考え込んでいるのだろう。 弥生の事、子供の事。 弥生が好きな彼女には、弥生の時間が遥かに進んでいたことを受け入れられないに違いないのだ。 可哀想だ。 彼女が気になって、なかなか仕事が俺も捗らないでいた。 そっとしておいた方がいいかと、様子を見ていたが、「葉月、何か飲むか?」と声をかけてしまうのは、やはり気になって仕方がなかったからだ。 「あ、いえ大丈夫ですありがとうございます」 だが彼女は無理に少しだけ笑ってみせる。その表情が痛々しい。 「貰い物の菓子がいくつか冷蔵庫にあるぞ」 さすが満腹なので無理だろうとは思ったが、他に気の利いた話を振ることが出来ない。 「だ、大丈夫です。お昼たくさんいただいたので、ありがとうございます」 俺に対して、申し訳なさそうに眉を下げる顔があまりにも頼りなくて、彼女に引き寄せられるように足が向いた。 そして、彼女の座るすぐ横に腰を下ろし顔を覗く。 近くで見ても、頼りない表情。 守ってあげたい。 「共哉さん?」 葉月は俺に驚いたように、少しだけ目を大きくした。 「おいで、葉月」 甘えてくれるだろうか。 葉月に向かって手を広げて、彼女が飛び込んでくるのを待つ。 もし躊躇うなら俺からいこうと思っていた。
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