271人が本棚に入れています
本棚に追加
葉月が俺を甘えるように呼ぶ。
「共哉さん」
「なんだ」
吃驚するくらい甘い声が自分から出た。
それに彼女が更に俺に顔を寄せるから、口元が緩むが、ちょうど今の自分の顔を見られてないことにホッとする。
「姉と会うときは、共哉さんも一緒にいてくれますか?」
彼女からの願いは可愛いもの。
「あぁ側にいるよ」
一人では心細いのだろう、頼ってくれた事が嬉しい。
勿論、一緒に居るつもりではいた。
「連絡が着たらすぐ知らせる」
「はい、お願いします」
「あぁ」
きっと、連絡はくるだろう。
弥生は俺の事が気になって仕方がないはずだ。
無理矢理な結婚だと理解しているだろうから。
今の俺なら、互いの気持ちが通じているとわかっているだけに、後ろめたさは少なく面会できるような気もする。
「共哉さん、ありがとうございました、もう平気です。お仕事に戻って下さい」
一人そう考え巡らせていると、彼女からの言葉にハッとした。
「あぁ」
距離を取ると、温もりが消え寂しさを感じたが仕方がない。
「お仕事邪魔してすみませんでした」
「いや、いいよ」
申し訳なさそうに謝罪される。
気にして欲しくなく、なるべく優しい笑みを見せ頭を撫でると、恥ずかしいのか目を逸らされた。
そんな葉月が可愛くて困らせたくて、わざと耳元で囁くのだ。
「帰ったらまた甘やかしてやるよ」
最初のコメントを投稿しよう!