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すると、彼女の頬は真っ赤に染まる。
顔色が悪かった彼女をここまで赤くさせた事に嬉しさを覚えた。
帰ったら存分に甘やかせたい。
そう密かに決意して、デスクに戻る。
そして盗み見る葉月の顔がまだ赤いことを確認して、バレぬよう口元を緩めた。
葉月を少しでも明るくさせることが出来た安心感からか、それからの仕事は驚くほどスムーズに遂行でき、彼女の帰宅する時間はあっという間にきた。
ずっとここにいてほしいと思うが、そういうわけにはいかない。
習い事がある。そのために伝えていた時間きっかりに崎田が迎えにきた。
残念だと思う俺に、彼女は深々と頭を下げる。
「共哉さん、お先に失礼しますね」
「あぁ、あとでな」
気持ちが少し和らぐ。
家に帰れば彼女がいるのだから。
人はこういう時に結婚はいいなと思えるのだろうか。
「ありがとうございました。お家で待ってます」
「あぁ」
「頑張って下さいお仕事」
「あぁ、ありがとう」
少し笑んで見せると彼女も微笑んで、部屋を出ていった。
帰ったら好きな女に会える。
それだけで葉月がいた時間くらいに、進められる気がした。
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