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気持ちをぶつけるように塞いだ唇は、徐々に激しくし角度を変えては吸い付いて、食んだ。
葉月は抵抗を見せるどころか、受け入れてくれ、俺にもたれかかってくる。
それが嬉しくて、より深く深く口付ける。
甘くて柔らかい唇はやみつきになるくらい、気持ちよくて、口内も同じ。
俺以外の侵入を知らないそこは、熱くて甘くてくらくらするほど。
どうしてよいのかわからずにいる彼女の舌が愛しくて仕方がない。
たどたどしく付いてくるのがどうしようもなく、可愛くて煽られる。
ここが会社なんだと忘れるほど、夢中に求めていた。
だからデスクの上の電話が鳴った時、胸がドキリとしたのだ。
家なら出なかったかもしれない。
だが、ここではそうはいかない。
仕方なく、口付けていた唇を離す。
「ん、はぁ……」
彼女から色っぽいため息が出て、たまらなくなる。
だがここで動揺を見せてはダメだと、得意の無表情で電話を取った。
相手は米倉、俺の今の状況を察しているようでその声は愉しげだ。
だから葉月に聞こえぬよう受話器を耳に強く押し付けた。
彼女は抱き、膝に乗せたままで。
内容は仕事の話だ。
いつもなら電話でするものではないのだが、彼なりに気を回しているようで、だがわざとらし言い回しも窺えて、冷静に話すのが結構大変だった。
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