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互いに気まずく、ぎこちなく彼女が料理を口にし始める。
この空気を変えたく、ふと思い出したのは午後のことだ。
「そういや、母親が葉月の帰ったあと来たぞ」
「え?」
「葉月が今までいたと米倉が伝えたら、会いたかったとうるさかった」
あれから母さんが来て、葉月がいたことを知ると“何で帰したんだ”と、うるさく言われたのだ。
「そうだったんですか」
「やけに気に入られてるようだな」
意外に好き嫌いが激しい母。
きっと控えめで慎ましい彼女を好いているのだと思う。
「私もお会いしたかったです」
それに葉月も母を悪く思ってないと安心した。
やはり煩い母でも、大事に思ってくれると気持ちがいい。
「そう言ってもらえると喜ぶよ。あの母親はあぁ見えて好き嫌いが激しいからな」
「そんな風には見えません」
「母さんも葉月が家に来てくれて良かったと思ってるよ」
本当に、そうだ。
「え?」
「近い内に実家にも顔を出すかな」
まだ実家には一度も連れていってない。
「はい」
母が連れてこいとうるさく言うのを無視していたが、たまには連れていってもいいかと思えた。
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