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ようやく電話を終えると、そのままの体勢で俺を見上げる葉月がいた。
「共哉さん……」
「ん?」
「お仕事大丈夫ですか?」
その顔が可愛くて、機嫌よくなった俺は微笑んで見せた。
「あぁ」
すると葉月の顔が若干赤らむことに満足する。
「そろそろ昼だな、葉月、どうしたい?」
時計はもうすぐ正午。
「え、どうしたいって……?」
彼女をどこかに連れていくことを米倉から提案されたため、尋ねた。
「社員食堂はさすがに嫌だろう?外に行くか?」
「あ、はい。社員食堂以外ならどこでも……」
彼女は特に行きたい場所はないらしい。
さすがに食堂は嫌だろう。
それは目立ちたくないという理由からに違いない。
「何でもいいな?」
「はい、共哉さんにお任せします。私はわからないので」
「わかった」
我儘に言ってくれてもいいのだが、控えめなこういうところが好きなのだと思い直す。
「ありがとうございます気を遣って下さって、お仕事忙しいのにすみません」
それに謙虚なところもだ、と付け加える。
「いや」
近くで彼女が喜んでくれそうな場所を考えていると、葉月から褒め言葉をもらった。
「優しいです。共哉さん」
裏のない素直な彼女からの言葉に嬉しくなる。
だから、思わず「可愛いな」と言って、可愛いことを言う唇にキスを落とした。
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