少しでも側に

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社会人になって、女とプライベートで昼食をとることなんてない。 連れていこうと選んだのは、彼女好みかはわからなかったがやや近い場所にある中華料理屋。 何でも美味しそうに食べてくれる葉月だから大丈夫だとは思う。 そんな事ばかり考えていた俺だから、まさか彼女の姉に会うことになるなんて、思わなかった。   俺の判断が正しかったのかそうでないのか、後になって俺を激しく悩ませることになるなんてこの時は思いもしなかった。 「ここから近いですか?」 「あぁ、十五分程だ」 米倉に店に向かわせ、俺と葉月は後部座席に座った。 「あの、お仕事は大丈夫ですか?」 「あぁ、心配しなくていい」 「そうですか、急いで食べますね、私」 俺に気を遣ってくれる彼女、その優しさが嬉しくて葉月の頭を撫でる。 「大丈夫だよ、ゆっくり食べればいいよ」 「は、はい」 彼女の優しさが移ったのか、俺の顔も優しいものになっていたのには気付かなかった。 店に着くと、俺たちは先に車から降りるのだが、一人車を停めてくる米倉に対して、葉月は申し訳なさそうに眉を下げる。 「私達だけ降りて申し訳ないですね」 米倉の心配をする彼女が面白くない。 「あいつは運転手兼秘書だ。あれが仕事なんだ、お前が気にすることはない」 厳しい視線を向けてしまう。 「中に入るぞ」 どうもこの感情を抑える事が出来ない。 だから強く手を引っ張り、店内へと進ませた。
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