少しでも側に

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俺と葉月との組み合わせではすぐに政略的なものだと理解できるはず。 見合いが嫌で出ていった弥生は、次の矛先が葉月に向かうことくらいわかっていただろうが、実際事実として目にすると複雑なはずだ。 「蓮池って、蓮池グループの?」 「えぇ」 俺の肯に弥生は更に顔を強ばらせる。 「えぇって、な、なんで……。なんで蓮池グループの……」  俺が葉月と結婚なんて、と言いたいのだろうか。 「なんでと言われましても、葉月とは縁があったので」 確かに政略結婚ではある。 だが、俺としては寧ろ初めから意識が違っていた。 葉月にとってはそうだろうが、今はどうだろう。 違うと思いたい。 弥生は怖い顔で俺を睨む。 その強い視線にすぐに反応したのは、弥生の娘だった。 「ママー、怖い!」 「ごめんね、美月。大丈夫よ」 俺から視線を外した弥生は、子供をあやし始める。 それを見た葉月は、下唇を噛んで苦しそう。 思わず俺の彼女を支える力が強くなっていた。 とりあえず、今日はこの辺で弥生と離した方がよさそうだ。 「お義姉さんは今どちらにいらっしゃるのですか?」 葉月にとって、弥生親子を目に入れさせるのは酷だと感じた。 「お義姉さんなんて……」 彼女を義姉と呼ぶのには俺も抵抗があったが、他に呼び方が思い付かない。 だから弥生が顔をしかめるのは密かに同感する。 「まぁま……」 俺らのやりとりに子供が泣き出した。 もう本当に無理だろう。子供にも、そして何より葉月にも。 「ここでは落ち着きませんし、改めて話をしませんか?今日はもう無理でしょう。お義父さんには話しませんから、こちらに連絡をしていただきたい」 俺は連絡先を渡し、今度改めて会うことを提案し、名刺を差し出した。
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