少しでも側に

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「私もその方がいいと思います。休み時間は限られてますから」 俺の行動に、どこから見ていたのか米倉が同意して、流れがこちらに向く。 弥生の後ろにも、誰なのか解らないが女が一人おり、こちらを窺っていた。 「私が出られないときは、秘書の米倉が出ますから」 弥生は俺らを睨み付けるようにして、名刺を受け取った。 「ママ帰りたい」 「そうね、ごめんね美月」 「ママ早く……」 「また連絡をするわ、葉月ごめんね」 葉月は何も答えない。 それでも弥生は子供を抱いて、店を出ていった。 「葉月、おいで」 立ちすくむ葉月には、俺の声が聞こえているのかいないのか、力の抜けた彼女を支えるようにして、予約していた席へ連れていく。 照明が暗い店だから、彼女の顔色をより悪く見せて心配になる。 「葉月、ほら飲めよ」 俺は葉月に温かいお茶を薦めた。 「温かい……」 それに少しだけホッとする表情を見せたから、俺も少しだけ安心する。 葉月を見つめていると、彼女もこちらを向いて互いの視線が絡む。 葉月の瞳は今にも涙が溢れそう。 泣いていい、と言えば泣くだろうか。 だが、ここでは彼女も気を遣うはず。 今はなるだけ優しい表情を向けるよう心がけ、そして後でゆっくりと彼女を甘やかせてやろうと決めた。
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