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「あいつ……」
もしかすると強引に迫ったのではないだろうか。
積極的だと言っていた米倉の声が頭の中で繰り返される。
中断した作業を進めようと手を動かすも、頭に入ってこない。
このまま仕事を続けてもミスしてしまいそう。
「米倉、俺は帰る」
「は?」
「今日は持ち帰って後は家でする」
今日中に済ませないといけないものがあるが、家でもできるものだ。
「何、葉月さん?」
察しのいい米倉には何が原因かバレバレだ。
「まぁ、ちょっとな。悪いがいいか?」
「駄目だと言っても帰るでしょ?いいよ、また連絡する。俺はまだ残るから」
「悪いな」
最近、米倉を振り回してしまうことが多い。
申し訳なく感じながらも、俺は甘え帰ることにした。
葉月は、あまりに早い帰宅に驚くだろうか。
目を丸くする彼女を思い出しながらも、問い詰めなければと思い直す。
やはり帰宅した俺を見る彼女の表情は思っていた通りのものだった。
「お、おかえりなさい」
驚く彼女は目を大きくした。
彼女に会えて嬉しいのに、不安が大きいせいで顔が強ばる。
「ただいま」
何から聞こうか。
でもまずは、彼女の体調からだと思い、俺は口を開いた。
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