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いつ寝てしまったのだろう。
気がつくと朝、腕にかかる重みが昨夜の行為を思い出すのを手伝うよう。
腕の中には素肌の彼女がいる。
くっつく身体が温かくて、すぐ下にある頭にキスを落とす。
「葉月」
彼女の名を小さく呼ぶが起きる気配はない。
まだぐっすり寝ているよう。
まだ朝の早い時間なのもあるが、初めての行為に疲れたのだろう。
丁寧に進めるよう努力はしたと思うが、それでも葉月にとっては大変な事だったに違いないのだから。
その事を思い出すと、胸が熱くなる。
そっと葉月の前髪を横に流して、その額にも口付けた。
こんな風に寝ている女性に自分からキスをしかける事なんてなかった俺なのに、葉月だとあちこちにキスを落としたくなる。
だがそういうわけにもいかず、もう一度額に唇で触れて、言えなかった気持ちを口にした。
「好きだ葉月」
それに起きる様子がなく安心するも、こういう時しか口に出来ない俺にがっかりして、それでも熱く重ねた夜を思うと、気持ちが伝わっているはずだと確信する。
それからどれくらい経っただろうか。
何度か頭や額にキスをして葉月を感じていると、「ん―」と、腕の中から目覚めるような声がして、彼女の身体が動くのを感じた。
俺は瞬時、寝たふりをしてしまう。
どんな反応をするのか知りたかったんだと思う。
俺の様に何かしかけてくる、そんな気がして。
だが俺の腕が僅かに持ち上げられそうになるのを感じ「おはよう」と言い、寝たふりをすぐに止めてしまう。
「お、おはようございます」
葉月は答えつつも、俺から離れようとしていた。
「なに、逃げてんだ?」
そうはさせるかとすぐに閉じ込めた。
まさか抜け出そうとするなんて思ってもなかった。
俺ばかりが好きみたいで悔しい。
「と、共哉さん、き、着替えなきゃ……」
期待していた俺は子供みたいにふてくされてしまう。
「ん?まだ早いだろ、もう少しこのままでいいだろう」
俺はもっとこうしていたい。そして触れていたい。
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