重ねる時と

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ずっとこうしていたい。心地よい時間。 優しい時間に今が朝だというのを忘れそうになる。 「俺もゆっくり出たいな」 「え?」 「できることなら休みたいよ」 できるなら休みたい。 それは無理だとわかっていながらも、口に出すと更にそれが強くなるよう。 彼女との時間を重ねたいと思う、強く。 「週末だな」 「え?」 母親の計らいで塔子さんも来ない。 仕事も休日を潰さないよう、スケジュールを組んだ。 「今週の土曜はフルート、別の日に代えてもらおうか」 「え?」 葉月の習い事は別の日に変えてもらおう。 「俺から言っておくから」 後で連絡するのを忘れないようにと頭に入れた。葉月と一緒にいことしか考えられない。 今日は早く帰られるだろうか。 「共哉さん」 「ん?」 一人考え巡らせている俺に葉月が呼ぶ。 「あの、共哉さんは、だ、大丈夫ですか?」 俺の身体を気遣っているのだろうか。 「あぁ」 「そうですか」 また照れたような声を出す彼女が可愛く、額にキスを落とす。 葉月が眠っている間は何度もキスを落とした場所である。 今の方が体温が熱い。 それは俺を意識しているからだと思えて、嬉しくなった。
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