重ねる時と

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大学での様子を見る事が出来ればいいのに、叶わないことを思いながら、気が付くと時刻は正午になっていた。                        「あの、蓮池専務」 「なんだ?」 米倉と昼飯をとるために、足を向けた社食の入り口で、女性社員に声をかけられた。 声をかけてきた女性社員は三人組。三人して、俺を見上げている。 だが、真ん中の女性社員だけが何か言いたげ。 両隣の女性社員は小声で“頑張れ”と言っているが、丸聞こえ。 何を言われるのかすぐにわかる。 「あ、あの、ご結婚されているのは存じあげているのですが、私専務が好きなんです」 女性社員はモテると自覚しているのか、上目遣いな目線は完璧。 甘えた顔付きで俺を見つめる視線には自信を感じる。 だが、わざと大袈裟に外した。 「悪いが妻がいる。気持ちには応えられない」 それから逸らしたまま冷たく伝え、米倉に“行くぞ”と声をかけた。 「専務」 甘えた声を無視し、足を進めると“頑張れ”と応援していた友人に行く手を遮られた。 「専務、この子ずっと専務が好きだったんですよ」 だから何なんだ、と苛つく俺に代わって答えたのは米倉だ。 「専務も奥様の事ずっと好きだったんですよ」 「米倉……」 ずっと好きだったとはなんなんだ、と思いつつも、否定するとめんどくさい事になるのは目に見えている。 「ですよね、専務?」 米倉の愉しそうな表情に苛つくが、大きく頷いて見せた。 その嘘は効果がかなりあった様で、三人に謝られた。 結婚していてもこんなことがあるのだ。 結婚していると周囲が知らない環境の葉月はもっと、あるに違いない。 俺の気持ちは不安に変わる。 大学での様子はわからないのだから。 だから、崎田からの報告にいてもたってもいられなくなるのだ。
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