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俺と米倉は、社食の隅の方で昼食をとる。
「結婚してるってのに、最近の子は積極的だね」
米倉が何気なく言ったことが児玉の存在を思い出させた。
「共哉?どうかした?」
「なぁ、結婚してると思わせるにはどうすればいいんだ?」
俺でなく葉月がだが、それは言えない。
「そんなの簡単だろ」
「簡単?」
どんな方法があるのだろう、と米倉を凝視する。
すると、愉しそうに目を細められた。
「葉月さんに指輪を嵌めさせればいい」
「指輪」
確かにそうだ。
「指輪をしていたら、周りの反応も違うだろうからね。まだ贈ってないだろ?」
確かに指輪を贈る事なんて、考えてなかった。
なぜ気がつかなかったのだろう。
「あぁ」
米倉の答えが思ったよりよいもので、俺は米倉が質問の本意を見抜いている事に気付かない。
「まだ学生だし、葉月さんが着けやすい物を一緒に選んで贈ったら?」
「一緒にか」
「少しは安心出来るかもね」
俺の中で彼女と指輪を買いに行くことは決定事項に変わる。
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