重ねる時と

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「指輪を渡して改めてプロポーズするのもいいんじゃない?」 プロポーズなんてできるわけがない。 まだ好きだと伝えてもいないのに。 それに何も言えないでいると米倉が笑いだす。 完全に面白がっている。 俺はむっとして食事を再開させた。 「喜ぶと思うけどね」 米倉のことはもう聞かない事にした。 何か言うと米倉を愉しませるだけだと思ったからだ。 そして午後、パソコンと睨み合っていた俺の携帯が着信を知らせる。 それは崎田からだった。 葉月を送り届けたというものだと思い、電話を取る。 やはり内容は思ってた通り、無事に帰宅したというもの。 だがしかし、続きがあった。 「奥様は今日、どこか慌てて車に乗り込んでこられました。理由を尋ねたのですが、フルートの日だからと仰っただけでして。何もなかったのかもしれませんが、私が気になりましたので、報告させていただきました」 いつもと違う報告に、落ち着かなくなる。 「葉月を追いかけてくるような人間はいたか?」 「いえ、そのような方は見られませんでした」 「そうかわかった」 児玉だろうか。胸に不安が広がる。
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