重ねる時と

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昨日と同じで、俺はただ葉月を抱き締めて眠るつもりだった。 本当に、それだけのつもりだった。 彼女が俺を呼ぶまでは。 「と、共哉さん……」 「……なんだ」 彼女の大きな瞳が近い距離で俺を真剣に捉える。 それに僅かに胸が鳴った時だ。 「さ、寂しいと思ってしまったんです」 帰宅した時と同じ台詞をくれた。 「寂しい?」 思わず聞き返す俺は不思議だった。 今側にいるのに。 「はい。だからもう少しだけ、き、キスを……して欲しい……です」 だがそれは、さっきのものとは意味が違う。 もっと触れてほしいという願い。 「お前……」 胸が大きく震えた。 「昨日も一緒に寝るだけで……少しだけ寂しくて……。わ、私共哉さんに触れられるの、す、好きなんです」 俺に触れられるのが、好き。 それが頭の中で繰り返される。 顔を真っ赤にして見つめる彼女が可愛い、 そんな言葉では言い表せないくらい俺をドキドキさせる表情。 「お前な……」 慣れてない葉月にそんな事を言われると、俺は保てなくなる。 「そんな顔しやがって……」 押し込めていた感情が溢れだして、彼女に触れることしか考えられなくなった。 「え、と、ん……」 彼女の唇を激しく奪う。 そして、「もう知らないからな」 と言って、我慢できなくなった感情を彼女にぶつけるのだ。
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