重ねる時と

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“嫌じゃない” そう言った彼女の瞳は俺に委ねるようなもの。 葉月の身体をゆっくりとベッドに寝かせ、俺の下に敷いた。 捕らえられる彼女の黒髪がシーツに広がって、綺麗だと思った。 俺は、これから葉月と繋がる。 組み敷く彼女の瞳をまじまじと覗く。 「え、と、共哉さん?」 初めての事で緊張しているに違いない葉月の顔に戸惑いが見える。 俺が彼女を導いてあげなければいけない。 それは嬉しい責任感。 目を瞬かせる葉月に、なるべく優しく微笑んで見せた。 少しでも不安が解ければいいと、気が楽になればいいと。 「なるべく、優しくするから」 そう言葉にすると、更に優しくできる気がした。 「え?」 ゆっくりと顔を近付けた。 「葉月」 艶やかな唇にキスを落とす。 熱っぽいそれに、鼓動が早くなるのを感じる。 彼女のそこはもっとどきついているだろうか。触れたら伝わってくるだろうか。 ここまで相手の事を思って触れ合ったことなど、ない。 葉月だけだ、 こんな気持ちを俺に持たせるのは。 「苦しいときは言えよ」 男の俺にはわからないが、初めての身体が痛みを伴う事くらいは知識がある。 我慢しそうな彼女への気遣い。 「……え?」 「我慢しなくていいから」 止められるとは思ってないが、少しでも和らげる事が出来る様努めたい。 「可愛いよ、葉月」 本当なら好きだと言ってあげたい。 だがこれが俺の精一杯の告白で、固くなった彼女の首元に唇を這わせた。
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