261人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
「あの、共哉さん。ご飯できました」
「あぁ、ありがとう」
「食べられますか?」
「あぁ頼みたい」
大学の後、習い事もあったというのに、彼女の食事は完璧だった。
「よく短時間で作られたな」
「そんな、手抜きです」
そのうえ品数が多く、彼女の要領の良さを改めて感じた。
葉月と結婚する前は学生であるから、塔子さんの作った食事を囲んでいくものだと思っていた。
「お前」
料理教室を開いてみたらどうだ、と言おうとしたものの止めた。
「はい?」
きっと、彼女なら免許などすぐに取れそう。
だが俺の妻に留めておきたい気持ちが邪魔をする。
「何でもない、食べていいか?」
「どうぞ」
何でもない顔をして手を合わせる。
彼女の手料理の味は俺のモノにしたい。
そんな独占欲を隠した夕食の時間。
いつも通り旨く、俺を癒してくれた。
最初のコメントを投稿しよう!