シンプルな感情

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「あの、共哉さん。ご飯できました」 「あぁ、ありがとう」 「食べられますか?」 「あぁ頼みたい」 大学の後、習い事もあったというのに、彼女の食事は完璧だった。 「よく短時間で作られたな」 「そんな、手抜きです」 そのうえ品数が多く、彼女の要領の良さを改めて感じた。 葉月と結婚する前は学生であるから、塔子さんの作った食事を囲んでいくものだと思っていた。 「お前」 料理教室を開いてみたらどうだ、と言おうとしたものの止めた。 「はい?」 きっと、彼女なら免許などすぐに取れそう。 だが俺の妻に留めておきたい気持ちが邪魔をする。 「何でもない、食べていいか?」 「どうぞ」 何でもない顔をして手を合わせる。 彼女の手料理の味は俺のモノにしたい。 そんな独占欲を隠した夕食の時間。 いつも通り旨く、俺を癒してくれた。
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