シンプルな感情

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場所は葉月と初めて二人で外食した和食屋。 時間は弥生に合わせた。 弥生も仕事をしており、忙しいらしく、突然な連絡は仕方がないことと思えた。 弥生と通話を終えると、頼りない表情の葉月が俺の胸を揺らす。 電話中ずっと、俺を見上げていた彼女は何を考えていただろう。 顔を寄せ頭を撫でると、彼女の眉は下がる。 「葉月、指輪は姉と会った後だ」 「後?」 「あぁ、俺としては先に早く買いたかったがお前の姉も仕事していて忙しいみたいだからな」 彼女を明るくするにはもっと違う台詞もあっただろう。 それなのに俺の欲をぶつけて、話を変えた感じだ。 「そうなんですか」 「あぁ、姉と会った後すぐ行こうな」 俺は葉月の左手を取り、薬指にキスをする。 「早く着けさせたい」 左手の薬指に早く。 「共哉さん」 俺を見つめる葉月の瞳が熱くなったの感じる。 「買ったらずっとしとけよ」 「は、はい」 約束は葉月の不安な心を少しでも楽にしただろうか。 そうだといいと感じつつ彼女に微笑んだ。
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