薬指の約束

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「どうだ?」 「はい。でも、どれもよくて選べません」 着けるもの全て可愛くてとても選べそうにない。 だって本当に可愛い。 「そうか」 すると悩んでいる私にスタッフが、もう一つ指輪を出してくれた。 「こちらはいかがでしょうか?」 「わ……」 それは全部が小さいダイヤで散りばめられているのだけれど、中心に月の形をしたダイヤが埋め込まれていた。 私は名に月が入っている。そのため月が使ってある物には昔から弱い。 筆箱やハンカチ、最近でいうとこの間買ったポーチなど、三日月のマークが入っているものを選んで使っている。 思わず声が漏れたのもそのせい。 「こちらは限定品でして、今日入ってきたものなんです。着けてみられますか?」 限定品のため考えれば高いとわかる。だが、今の私には月の形が魅力的で首を横に振れない。 引き寄せられるように手に取り、キラキラ輝く指輪を嵌めた。 「綺麗……」 きっと月の形が入っているからだと思うけれど、それは一番素敵にみえる。 「これにしようか、葉月」 多分彼に見破られたのだろう。 「はい…」 高価な物だと思うのに、これが欲しいと思ってしまい頷いてしまう。 共哉さんへの初めての我儘。 それは偶然にも私の名の入った“幸葉”という名の指輪だった。
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