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どうしたのだろう。
「と、共哉さん……」
いきなりの行動に戸惑う。
多くの人が通る場所で、抱き寄せられる。
共哉さんをそこまで知ってるわけではないけれど、
らしくないなんて思ってしまう。
何を思っているだろう、黙ったままの彼に不安になる。
「共哉さん」
もう一度彼を呼ぶと、ゆっくりと離して私を見つめる共哉さんと視線が絡んだ。
「そうだな」
「え?」
「いや、俺が悪かった」
「え?」
彼の瞳は揺れていて少し寂しそうで、謝ってくるのにどうしていいかわからない。
「葉月に早く指輪を着けさせたいとばかり考えてた」
「共哉さん」
それはありがたいこと。
私に気を遣ってくれたんだと思うから。
「ありがとうございます。共哉さんの気持ちとっても嬉しいです」
「そうか」
すると、彼が少しだけ微笑んでくれた。
「はい。指輪楽しみにしていますね」
「あぁ」
だから私も笑顔で彼を見つめるのだ。
すると、もう一度顔を押し付けられる。
彼は私の頭に手をポンポンとゆっくり弾ませると、優しい声で”葉月“と呼んでくれた。
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