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そのせいか、せっかく歩き出した彼の足を止めてしまう。
「葉月」
握った腕の隙間から彼を覗くと、少し難しい顔をした彼が見え胸がドキリとする。
「ご、ごめんなさい」
気分を悪くさせたかもしれない。
だが彼の眉が僅かに下がり、ホッとする。
怒ってはなさそう。
だけど何を考えているのかわからない。
「いや葉月……」
意識を集中させた。
「はい」
しかしすぐ、私の身体に鈍い痛みが走った。
「っ……」
「あっ、すみません」
「あ、いえ……」
それは私が立ち止まっていたため、通行人にぶつかられた痛みだ。
「葉月、大丈夫か?」
「えぇ、そんなに強くなかったので平気です」
「足を止めて悪かったな。とりあえず進もう」
「はい、すみません。私がぼんやりとしていたせいで……」
彼は何を言いたかったのだろうか。
少し気になったが今はそれよりも彼の行く方に付いていく方を優先した。
すると彼は「葉月、俺も同じだから」と言った。
「え?」
歩きながら、私は首を傾げる。
意味がわからない。
私はまさかそれが告白の返事とは思わなかった。
見上げた先の彼の横顔は無表情。
だから余計不思議に思った。
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