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ジロリと私を睨んだあと、義祖父は共哉さんに視線を向ける。
「共哉」
「何?」
何を言うのだろう。
ドキドキしてしまう。
「お前は彼女を食事に連れ出すことはないのか?」
「そうだな。そんなに機会はないかもしれない。まだ数える程度だよ。葉月は料理が得意だから家で食べることの方が多いよ」
得意と言ってもらえたのには嬉しかったが、ドキドキはそのまま。
「料理を作るのか?」
「あぁ」
「この娘がか?」
義祖父は眉間に皺を寄せ、私を再び見る。
もしかするとそれも失敗だったのだろうか。
宮前さんがいるというのに。
何もかもが不安になってしまう。
「あぁ、爺ちゃんの好きな茶碗蒸しも作るよ、な?」
「あ、はい……」
茶碗蒸しとは共哉さんの好物だ。
同じなんだと知り、少し緊張が和らぐ。
「それにビーフストロガノフも、な?」
「あっはい」
それも義祖父の好物なのだろうか。
でもそんな事聞く勇気はない。
「……そうか、支払いの事は気にしなくていい。共哉この娘に適当に頼んでやれ」
義祖父は私から視線を逸らす。
結局、共哉さんが薦めてくれた物を頼んでもらう。
確かに蓮池グループのトップの義祖父に支払いの心配なんていらないと思うが、やはり気が引けるのは私が無駄遣いに慣れてないせいだ。
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