本当のところ

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「ねぇ、葉月携帯震えてない?」 「え、あっ……」 友梨香に言われ、震えている携帯に気付く。 覗くと、今まさに頭の中に浮かんでいた共哉さんからだった。 「で、出ていい?」 「うん」 ちょうど出られるタイミングに、胸が高鳴る。 「も、もしもし」 「葉月、今いいか?」 「あっはい」 今朝聞いたばかりの彼の声。 電話の声はいつもより低く届くけど、間違いなく彼の声だ。 「今日フルート講師、実家に来てくれるそうだ」 「あっ、そうなんですね。ありがとうございます」 「あぁ。塔子さんが荷物は持っていくようだから、そのままいけばいい」 「そうなんですね、ありがとうございます」 「あぁ」 それを聞いて、しばらく黙ってしまう。 彼との電話は慣れてない。続ける言葉に悩む。 そもそも電話とはどんなことを話すのだろう。 「葉月、大丈夫か?」 「は、はい」 「そうか、また連絡する」 「あっはい」 「じゃあな」 そうして切られるのに少しそっけなくも感じたが、彼は仕事の合間だから仕方がない。 それにせっかく電話をもらえたのに、上手く話せない自分にがっかりしたりする。 それを見ていた友梨香に苦笑される。 「そんな顔して、寂しいって言えば良かったのに」 「え、もう言えないよ……」 急に寂しいと言った後の甘い時間を思い出す。顔を染めると、言われてしまう。 「へぇ、意外に葉月って甘え下手なんだ」 私は甘えん坊なの? なんだか彼女には色々見抜かれているようだ。
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