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落ち込んでいた気持ちも、彼からの短い電話でわずかに明るくなった気もする。
それに大学が終わり義母が直に私を迎えにきたことでそれどころではなくなってしまう。
「葉月さん!」
崎田さんに終わる時刻を伝えていた私は、待ち構えていた義母の存在に驚いた。
「お義母様……」
「ふふ、来ちゃった。待ちきれなくって」
なんだか義母が可愛く思える。
それでも恐縮しつつ、迎えの車に乗り込んだ。
にこにこしている義母の横で、私は固くした。
「そう緊張しないでちょうだい」
「はい」
「家だと思って、ゆっくりしてちょうだいね」
優しい声に胸が温かくなる。
「あっ、はい」
「ふふ、可愛いのね葉月さん。共哉が今日のこと心配して、何度か電話をしてきたの。あの子の気持ちがわかるわ……」
「え……」
彼が何度も電話をしてきたなんて信じられず、彼女を見て瞳を瞬かせる。
「私が葉月さんに変な事をしないか心配みたい。あの子はよっぽどあなたが好きなのね」
それにさらに固まってしまう私を義母は微笑んだ。
「心配しないでちょうだいね、変なことをしないわ」
私が知りたいのはそこではないのだけれど、あんまり固まるから心配したよう。ドキドキする心は、義母には気付かれなかったけれど、驚きは大きかった。
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