本当のところ

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彼は思っている以上に心配性なのかもしれない。 そう片付けるのが精一杯。 もしかすると昼の電話も、心配してくれてのことだったのかもしれない。 またかかってくるかもしれない。 そう思うと、携帯の入った鞄が重みを増す気さえした。   彼の実家に行くのは初めてのこと。 共哉さんが連れていくと話していたが、まさか彼抜きで行くことになるなんて思いもしなかった。 当たり前だけどそこは、実家より大きな敷地に立っていて、どこの家より目立っていた。 ドキドキしつつ義母の後に続く私を出迎えてくれたのはなんと義祖父。 「いらっしゃい、よく来たな」と言われた時には更にドキリとした。 この前会ったばかりの義祖父は、より表情が柔らかい気がする。 「あら、お義父さんずっと待ってらしたの?」 「そんなわけあるか、車の音がしたんだ」 「あら、そうでしたか」 「そうだ」 「お義父さんはお耳がいいのね」 「そうだ」 そんなやりとりの中、私は家にお邪魔する。 二人に続き歩く私だけど、やっぱり一人では心細い。 彼と来たかった、なんて考えてしまう私を、義祖父が振り返って誘う。 「葉月さん、写真を見せてやろう、来なさい」 「え、あっ……」 それはありがたい誘い。 「お義父さん、葉月さんはフルートのお稽古があるんですよ」 「なんだ、そうなのか?」 「はい……」 義母が代わりに断ってくれた通りなのだ。 それに顔をしかめた義祖父だったが、なんと私のレッスンもみていてくれた。 それは義母様も。 二人に見守られて教わる私は、なんだかやけに子供みたいに感じる。 彼より年下だから、お嫁さんというよりはそれに近いのかもしれない、 嬉しいけど複雑で、なんだかくすぐったい気もした。
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