思わぬコト

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「喉や頭の痛みはないですか?」 それはない、と首を横に振る私に体温計を握らせる。 「寝起きですけど、一度計ってみましょう?」 「わかりました」 言われるがまま体温計を脇に挟むと、静かな部屋にバイブ音が響いた。 「坊っちゃんです。葉月さん、計っててくださいね」 「あっ、はい」 それは宮前さんの携帯で、共哉さんからだった。 部屋を出ていった彼女に付いていく事もできず、私はここにいるしかない。 気になるけれど。 だが、すぐに体温計から音がして、それを見て驚く。 「わ……」 そこにはかなり高い数字が出ていたから。 もう一度計ってみようと、反対の方にも挟むけど、ほぼ同じ数字。 しかも、戻ってきた宮前さんに覗かれてしまった。 「葉月さん、お熱があるじゃないですか」 「……はい、そうみたい、です」 最悪だと思った。 彼が疲れて帰ってくるというのに。 「大丈夫ですか?私ったら、もっと早く……」 「あの、宮前さん、共哉さんには内緒にしていてもらえませんか?」 幸い、だるいが他に症状もない。 このまま黙っていてもらえたなら、夕食の準備もできる、なんて考えたのだが宮前さんに拒否されてしまった。 「それは無理です。坊っちゃんは気にしてましたし、それについ今、熱っぽいことも伝えましたから」 「え……」 遅かった。 「予定より早い便で帰るようですよ、坊っちゃん」「え?」 「それより葉月さん、後でまた計ってみましょうね、お腹は空いてないですか?」 どうしよう。 なんて私、迷惑をかけてしまったのだろう。 私は空腹のことなんかより、しまったと思う方が強くそれにまた首を横に振るのだ。
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