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それから少しして共哉さんは戻ってきた。
ベッドの淵に座り私を覗く。
きっと医師に来てもらえるよう手配したに違いない。
それを尋ねようかとしたけど、止めておく。
共哉さんは何も言わないし、私はきっとまた同じ事を言ってしまうから。
「葉月、少し起き上がれるか?水分摂ろう」
「はい」
彼に支えられながら、もぞもぞと身体を起こすと、冷えたスポーツドリンクのペットボトルを渡された。
買ってきてくれたのだろう。
「ほら、飲め」
蓋は開けてあるから、すぐに口を付けた。
あまり喉も乾いてなかったけれど、優しい甘みが美味しく感じ、一気に半分くらい飲んでしまった。
「よく飲めたな。もういいか?」
「はい、ありがとうございます」
隣に私を見つめる共哉さんがいる。
今さらだが、ごくごくと、はしたない音を立てなかっただろうか、と考えなんだか少し恥ずかしくなる。
「いいよ。飯はもういいか?あまり食わなかったんだろ?」
「はい。もうお腹いっぱいです」
俯きて言う私を、彼は布団の中に誘導した。
「アイスやゼリーがあるから、腹減ったら言えよ」
「え、あっ、買ってきて下さったんですか?」
冷蔵庫に今朝までなかった。
「食べやすいと聞いたからな」
誰にだろうか。それでも嬉しい。
「ありがとうございます。共哉さんが買ってきて下さったなんて嬉しい」
この日をきっかけに、彼が私に土産をよく買って帰るようになったのはまた別の話で、共哉さんは私からまるで照れ臭そうに視線を逸らした。
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