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「……共哉、可愛いね」
宮内さんは私から視線を共哉さんへ移す。
どうやらかなりのお世辞の上手い人のよう。
「隆、さっきも伝えたが症状は熱だけだ」
「はいはい、わかってるよ」
共哉さんと場所を交代したため、今度は宮内さんがすぐ横にきた。
「このままでいいですか?」
寝たままでよいのか疑問だったが、「いいですよ、そのままで、口、開けてくれるかな?」と言われた。
「はい」
あーんいうように口を開けると、喉に器具を当てられた。
「声、出してもらえる?」
それに従い声を出すと「ありがとう。いいよ」と言われ口を閉じた。
「どうだ?隆」
「うん、喉が少し赤いね。今から熱もまだあがるかもしれないし、咳も出てくるかもしれない」
不思議だ。ちっとも喉は痛まないのに。
「胸の音も聴かせてもらいますね。服の上から当てますから」
「あっ、お願いします」
胸の音も聴いてもらうため、私は宮内さんに言われる通りに深呼吸を繰り返す。
「背中の音も聴きたいから、身体を横に向けてくれる?」
「あっはい」
そうすると、パジャマ越しに聴診器があたるのを感じた。
その後もう一度胸の音を聴かれるのだけど、共哉さんが「隆、そろそろいいだろ」と割った。
「うん、音は綺麗だな」
病院でないため診察してもらっている感じがしなかったが、聴診器をあてられるとやはり彼は本当に医師なんだと改めて思った。
音はよいというのに、共哉さんはなんだか不機嫌な様子だ。
「喉からくる風邪だろうね。薬を飲めばすぐ治るよ」
風邪も流行ってない時期なのに、どうやら風邪をひいたようだ。
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