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「念のため聞くけど、薬は普通に出していいのかな?」
「え?」
宮内さんの言葉に一瞬何の事かわからず、瞳を瞬かせる。
だけど共哉さんには伝わっていたようで、彼は「いや、一応妊娠してても大丈夫なものを処方してくれ」と言った。
「わかった。じゃあ漢方薬とうがい薬出しとくから」
「助かる」
宮内さんと会話を進める共哉さんを見つめつつ、私は“妊娠”という思ってもなかった単語を頭の中で繰り返す。
耳に残り、固まる。
たまらず腹部を押さえた。
そんな私の頭に彼が手を置いた。
「念のため、な?」
優しく言うから、俯く事しかできない。
確かに身体を重ねたのだからゼロではない。
だが人前で話されるのは恥ずかしい。
「熱はそんなに上がらないと思うけど、夜は気にしてあげて」
「あぁ」
「四日分出しとくけど、良くなったら止めていいよ」
「わかった」
全部彼任せだ。
「あとさっきも言ったけど、カロリーを摂取すればいいから、食べたいものを食べさせて水分は多く摂らせて、とにかくゆっくり休ませてあげて」
「あぁ、わかった」
衝撃が抜けない。
「いつでも連絡していいから」
「あぁ、悪いな」
それに比べ彼は淡々としているから、密かに消化しようと忙しかった。
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