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「当たり前だけど、すぐには下がらないな?」
共哉さんは私の前髪を横に流しつつ、額に手を置いた。
そして、小さくため息を吐く。
「はい……」
熱冷ましを飲んだわけでもないし、すぐには下がらない。
「きつそうだな」
そうして彼は困った顔で、「可哀想にな……」と、小さく言った。
「代わってあげられたらいいのにな」
「共哉さん?」
「早くよくなれよ」
まるで彼は願いを込めるように頬に長めのキスを落とす。
それは優しいもので身体中の熱がそこに集まる気がした。
「がん、ばります」
早くよくなるように頑張ろうというつもりで言った私だが、彼に小さく吹き出されてしまった。
彼の表情は珍しいもの。
「頑張れ」
「はい」
額に置いたままの手で撫でられるのだが、それがあまりに優しくて自然に瞳が閉じていく。
それでも少し開けて、また閉じて、開けて、閉じてとゆっくり繰り返すうちに、私は眠ってしまっていた。
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