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そのせいか、熱は少し下がっただけ。
彼は私の額に手を置き、その上から彼のものもくっつけた。
自分の息なのか、彼のなのか口の辺りが一気に熱くなる。
「共哉さん、こんなに近付くと移ってしまいますよ?」
同じベッドでマスクもせずに寝ていた彼だから今更かもしれないが、移ってしまう。
「人に移したら早く治るっていうしな?」
「へ?」
「俺に移せばいい」
そう言って彼は顔をより近付けて唇にキスをする。
「え……」
それはすぐに離れず、しかも角度を変えて続けようとするから、「だ、ダメですっ、共哉さんはお仕事とか、色々あるんですから……」と、慌てた。
本当に移っては大変。
熱から逃れようと彼でない方に顔を向けるも、「もう何年も風邪なんてひいてない。大丈夫だよ」と、自信あり気に言われてしまう。
また共哉さんの方に顔を向けられた。
「それでも、移ります」
だから大きく首を横に振ってこれ以上の口付けを避ける。
「発熱時は感染力が高いって、宮内さん言ってたじゃないですか……。共哉さんはマスクを薦められて……んっ!」
宮内さんが、そう言っていた。
だからそれを彼に話したのだけれど、塞がれた唇で続きを言うのはできなくなった。
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