届いた先

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「あの子って?」 「え……」 そんなの姉の子に決まってるのに、彼は何を思っているのだろうか。 私が驚くと彼は口を閉じてしまった。 「あの……姉の子供の物を買いに来たんですよね?」 それを言っても更に開くことはなく、私は戸惑いさえする。 「と、共哉さん?」 やはり何か別の事を考えていたのだ。 どうしてこうなったのだろう。 私の自らの言動を振り返るべきかと考えを巡らせる。 すると彼はため息を大きく吐いたかと思うと、眉間を摘まむように頭を抱えた。 「……共哉さん?」 恐る恐るという風に彼に尋ねると、その彼の瞳は先程よりも鋭い。 「……そうだよな」 「え?」 「弥生の子だな」 だがその瞳とは反し、彼の声は落胆しているようにも聞こえる。 「はい。そうですけど……」 彼は一体何を思っていたのだろうか。 「共哉さんは誰を思っていたのですか?」 それを尋ねれば彼は、今必要のない質問で返してきた。 「お前体調は?」 「……へ?」 「体調はいつも通りか?」 何故それを聞くのか解らないが、尋ねられたのだから頷くしかない。 「はい」 「……まじか」 「え?」 元気だったらいけなかったのだろうか。 そんなはずはないのだが、彼の考えが全然読めない。 「共哉さん?」 「俺はてっきり……」 てっきり何だろうかと、頭を抱える彼を変わらず見つめる。 「お前が妊娠したのかと思った」 え……、と固まる。 それに今度は私が驚く番で、目が乾くほど暫く瞬けないでいた。
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