235人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
「御曹司やっぱかっこいいよね」
「え?」
「あの米倉って人も格好いいけど」
「そう?」
「あ、あの女の人は仕事仲間で米倉さんの元カノみたいだよ」
「そ、そうなんだ……」
私と彼が戻ると、生温かい空気に迎えられた。
彼らはすぐに行ってしまって挨拶も慌ててするほどだったが、心は十分に満たされた。
私たちが話している間、友梨香は情報収集をしていたようだ。
「あっほら葉月の百貨店の袋」
「あっうん……」
私たちの横を寿の袋を両手に持つ人が通った。
正確には私の、というより父のというのが正しい。
私はもう寿じゃない。
だが父のと本当に言えるのだろうか。
経営が傾いて、援助しているのは彼であるのだ。
「物はいいんだろうけどさ。高いんだよね」
「うん……」
どれだけのものかは知らないが、父自らそれは話していた。
「私みたいな一般人にはとても買えないよ」
「そんなこと……」
あるのだろうか。
きっと友梨香の方が私よりそういうことに詳しい。
「あっほら、さっきより少し空いてる。ラッキー」
私たちはさっきと同じ店に友梨香と並ぶ。
彼女の言う通り、少し人が減っていた。
そんな中、私の胸には新たな思いが住みついた。
それは父が経営する百貨店のことだった。
最初のコメントを投稿しよう!