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「共哉さん、あの……」
母がいなくなった後、彼をそのままで見上げた。
それに彼は優しい顔で私を見返す。
母と話をした後で、益々定まらなくしてしまった私はひどく子供だ。
彼は父に話す気でいるだろう。
それについて言いたいことがあるものの、結局振り回してしまっただけの自分の行動だけに、口にできないでいた。
「ん?」
「あの……」
「葉月、今夜は挨拶だけして帰ろうか」
「共哉さん……」
しかし、彼は私の心を読むように提案をくれる。
それこそひどく情けない。
「俺もお義父さんも明日は仕事だしな。
また改めて来よう。いいか?」
情けなく思いながらも私は頷く。
私はまだ優しい表情でいてくれる彼の腕に顔を埋めた。
今の顔を見られたくない。
ひどく幼く思われているに違いないと思うと、恥ずかしかった。
彼はそれでも私の頭を二度、優しくポンと叩いてくれる。
もっと彼に釣り合える人になりたい。
私の思いは揺れ動くのだ。
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