二度目の意味

23/23
253人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
「共哉さん、あの……」 母がいなくなった後、彼をそのままで見上げた。 それに彼は優しい顔で私を見返す。 母と話をした後で、益々定まらなくしてしまった私はひどく子供だ。 彼は父に話す気でいるだろう。 それについて言いたいことがあるものの、結局振り回してしまっただけの自分の行動だけに、口にできないでいた。 「ん?」 「あの……」 「葉月、今夜は挨拶だけして帰ろうか」 「共哉さん……」 しかし、彼は私の心を読むように提案をくれる。 それこそひどく情けない。 「俺もお義父さんも明日は仕事だしな。 また改めて来よう。いいか?」 情けなく思いながらも私は頷く。 私はまだ優しい表情でいてくれる彼の腕に顔を埋めた。 今の顔を見られたくない。 ひどく幼く思われているに違いないと思うと、恥ずかしかった。 彼はそれでも私の頭を二度、優しくポンと叩いてくれる。 もっと彼に釣り合える人になりたい。 私の思いは揺れ動くのだ。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!