二度目の意味

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「順番がまた入れ替わるが、式も必ず挙げような」 「え?」 今の会話で結び付く式は一つだ。   「結婚式、俺たちの」 「あぁ……」 彼の言葉に、私は瞬時お見合いの日を思い出した。 大学卒業後に式を挙げると決めた予定だ。 あの時は、神様に誓えないとホッとしたものだった。 「卒業後に挙げる予定だったが……」 彼は言葉の途中で止まる。 私が大学を辞めると言った台詞を思い出したからだとわかった。 甘い空気がやや固くなるのもわかる。 「共哉さん……」 「なぁ葉月、」 「はい」 彼の目が僅かに鋭くなって、緊張した。 「今も寿で働きたいと思うか?」 「はい……」 まだ、私はそうした方がいいと思っている。 彼の気持ちを知れた今も、そうだ。 彼は私が頷くと、小さく息を吐いて口を開いた。 「前にお前が妊娠してると勘違いしていた時があっただろ?」 「はい」 なぜ今その話が出るのか不思議だった。 それでも続きが知りたいと、彼を見つめた。 「あの時は、簡単に大学を辞めてもいいと思ってた」 「そうなんですか……」 「むしろ辞めたらずっとここにいるわけだから、嬉しいとも」 「共哉さん……」 彼の知らなかった気持ちに触れた。 彼は妻には家にいて欲しい人なのだと知る。 「だが、寿で働くために辞めるのは勧められない」 「共哉さん……」 「金のことなんて気にすることないんだぞ」 彼が私に優しく言うのに、本当にそれでいいのだろうかわからなくなった。
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